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勉強が好きな子は、本当にいるのか。

勉強が好きな子は、本当にいるのか。

― 「勉強好き」の正体を、心理学と教育学から考える ―


「うちの子は、勉強が嫌いなんです。」


保護者の方とお話ししていると、この言葉を耳にすることがよくあります。


その一方で、


「あの子は勉強が好きだから成績がいいんですよね。」


という言葉も、教育現場ではよく聞きます。


では、本当に「勉強が好きな子」はいるのでしょうか。


私は28年間、多くの生徒たちと向き合ってきました。


その中で気づいたことがあります。


勉強が好きだから成績が伸びた生徒よりも、


**できるようになったから、勉強を前向きに捉えられるようになった生徒**の方が、はるかに多いということです。


だから私は、「勉強好き」という言葉を聞くたびに、少し違う見方をしています。


その子が好きなのは、本当に勉強なのでしょうか。


それとも、「できるようになる自分」なのでしょうか。


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人は、本来「学ぶこと」が好きな生き物


少し考えてみてください。


子どもたちはゲームのルールを驚くほど早く覚えます。


好きなスポーツの戦術を自分から調べます。


好きな歌なら、何十曲もの歌詞を自然に覚えています。


誰かに言われたわけではありません。


自分から学んでいるのです。


つまり、人は本来、「学ぶこと」が嫌いなのではありません。


興味があり、「できるようになった」という実感が得られることには、驚くほどの集中力を発揮します。


では、なぜ学校の勉強だけは嫌いになってしまうのでしょうか。


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「できない経験」は、学ぶ意欲を奪ってしまう


教育心理学では、人は成功体験を積み重ねることで意欲が高まりやすいことが知られています。


難しかった問題が解けた。


先生に褒められた。


テストの点数が少し上がった。


昨日より英単語を覚えられた。


そんな小さな成功体験は、「もう少し頑張ってみよう」という気持ちを育てます。


反対に、


何をやっても分からない。


頑張っても結果が出ない。


間違えるたびに叱られる。


そんな経験が続けば、勉強が嫌いになるのは、ごく自然なことです。


勉強が嫌いなのではありません。


**「できない経験」が積み重なった結果として、勉強を避けるようになってしまう**のです。


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「勉強が好きな子」の正体


教育現場で成績が伸びる生徒には、一つの共通点があります。


最初から勉強が好きだったわけではありません。


分からなかった問題が分かるようになる。


解けなかった問題が解けるようになる。


模試で少し順位が上がる。


その積み重ねが、


「もう少し頑張ってみよう」


という気持ちにつながっていきます。


心理学者アルバート・バンデューラは、この「自分ならできる」という感覚を**自己効力感**と呼びました。


自己効力感が高まると、人は新しいことにも挑戦しやすくなり、失敗しても立ち直りやすくなることが、多くの研究で示されています。


つまり、


**好きだから勉強するのではありません。**


**できるようになるから、勉強を前向きに感じられるようになる**のです。


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例えば、こんな生徒がいたとします


これは、教育現場でよく見られる変化をもとにした、一つのケースです。


中学二年生のAさんは、入塾したばかりの頃、


「勉強は嫌いです。」


とはっきり言っていました。


数学の問題を前にすると、


「どうせできません。」


英単語のテストでは、


「覚えられないから無理です。」


そんな言葉が口癖でした。


そこで、勉強時間を増やすことよりも先に、勉強の進め方を見直しました。


「今日は英単語を10個だけ覚えよう。」


「数学は、この一問だけ理解しよう。」


目標を小さくし、一つひとつ成功体験を積み重ねていきました。


数週間後。


学校の小テストで少し点数が上がりました。


その日の授業が終わる頃、Aさんは問題集を持ってきて、こう言いました。


「先生、この問題、もう一回やってもいいですか。」


以前なら避けていた問題です。


その瞬間、私は思いました。


好きになったのは勉強ではありません。


**「できるようになる自分」**だったのです。


もちろん、これは特別な話ではありません。


教育の現場では、このような小さな変化が、やがて大きな成長につながっていく姿を何度も見てきました。


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「ちょうどいい挑戦」が、人を夢中にする


心理学者ミハイ・チクセントミハイは、人が最も集中できる状態を**フロー**と呼びました。


課題が簡単すぎると退屈になります。


難しすぎると諦めてしまいます。


人が夢中になれるのは、


**「少し頑張ればできそうだ」と感じる難しさ**なのです。


教育も同じです。


一人ひとりに合った「ちょうどいい挑戦」があるからこそ、人は成長を楽しめるのです。


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AI時代でも、教育の本質は変わらない


AIは、答えを教えてくれます。


英語も訳してくれます。


数学の解き方も説明してくれます。


では、人は勉強しなくてもよくなるのでしょうか。


私は、そうは思いません。


AIが教えてくれるのは「答え」です。


しかし、


「分かった。」


「できた。」


「前より成長した。」


という喜びは、自分自身で努力した人だけが味わえるものです。


教育の価値は、知識を覚えることだけではありません。


**自分は成長できる**という実感を持てることにあるのです。


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播磨塾が大切にしていること


私は28年間、生徒たちと向き合ってきました。


卒業するとき、


「先生、勉強って意外と面白かったです。」


そう言ってくれる生徒がいます。


私は、その言葉が好きです。


勉強を好きになったからではありません。


その生徒が、


**「自分は努力すれば成長できる人間なんだ」**


と信じられるようになった瞬間だからです。


播磨塾では、「勉強を好きにします」とは言いません。


それは教育者が約束できることではないからです。


しかし、


「分かる。」


「できる。」


「前より成長した。」


そんな瞬間を、一つでも多くつくることはできます。


その積み重ねが、やがて学ぶ姿勢を変え、自信を育て、未来を変えていく。


私たちは、その瞬間を何度も見てきました。


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勉強が好きなのではなく、成長する自分が好きなのかもしれない


「勉強が好きな子は、本当にいるのか。」


私は、


「いる。」


と思います。


ただ、その子たちが好きなのは、


教科書ではありません。


問題集でもありません。


テストでもありません。


好きなのは、


昨日できなかったことが、今日できるようになること。


分からなかったことが、少しずつ分かるようになること。


つまり、


**成長する自分**なのです。


人は、成長を実感できるものを好きになります。


だから教育とは、勉強を好きにさせることではありません。


「できた。」


「分かった。」


「もう一度やってみたい。」


そんな小さな成功体験を積み重ねながら、


**「自分は成長できる。」**


そう信じられる人を育てることです。


志望校合格は、もちろん大切です。


しかし、それは教育のゴールではありません。


受験を通して、自分の可能性を信じられるようになること。


私は、それこそが教育の本当の価値だと思っています。


だから播磨塾は、「勉強が好きな子」を育てる塾ではありません。


**学ぶことを通して、自分自身の成長を楽しめる人を育てる塾でありたい。**


それが、28年間変わることのない、私たちの願いです。


 
 
 

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