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偏差値は、本当に役に立つのか。― 数字を否定する前に、知っておきたいこと ―

ここまで見てきたように、偏差値は人間の能力すべてを表す数字ではありません。


統計学的には、受験者集団の中での相対的な位置を示す指標であり、教育学や認知科学の視点から見ても、「頭の良さ」を一つの数字だけで説明することはできません。


では、偏差値は役に立たないのでしょうか。


結論から言えば、その答えは「いいえ」です。


偏差値には限界があります。


しかし、それと同じくらい大きな価値もあります。


教育において重要なのは、「偏差値を否定すること」ではなく、「偏差値を正しく使うこと」です。


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偏差値は、受験制度を支える重要な指標である


日本の大学入試では、毎年数十万人もの受験生が限られた期間の中で試験を受けます。


その中で、できる限り公平に学力を比較するためには、共通の物差しが必要になります。


その役割を担っているのが、偏差値です。


偏差値があることで、異なる試験や年度でも、おおよその学力水準を比較しやすくなります。


高校や大学が入試難易度を分析したり、受験生が志望校選びの参考にしたりできるのも、この指標があるからです。


もちろん、大学は偏差値だけで合否を決めているわけではありません。


入学試験では得点そのものが評価されますし、学校推薦型選抜や総合型選抜では、面接や小論文、活動実績なども重視されます。


それでも、偏差値は「現在の学力を客観的に把握するための道具」として、長年にわたり活用されてきました。


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偏差値を否定することの危うさ


近年では、「偏差値なんて意味がない」という意見を耳にすることがあります。


確かに、偏差値だけでは測れない能力があることは、本稿でも述べてきました。


しかし、そのことと、「偏差値は不要である」という結論は同じではありません。


もし偏差値という指標が存在しなければ、受験生は自分の学力を客観的に把握することが難しくなります。


「今の実力でどの大学を目指せるのか。」


「あとどれくらい力を伸ばす必要があるのか。」


「前回より成長しているのか。」


こうした問いに答えるためには、何らかの客観的な基準が必要です。


偏差値は、その基準の一つとして機能しています。


教育において重要なのは、数字をなくすことではなく、数字を過信しないことなのです。


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偏差値は「目的」ではなく「道具」である


教育現場では、ときに偏差値そのものが目標になってしまうことがあります。


しかし、本来の目的は偏差値を上げることではありません。


学力を高めることです。


偏差値は、その結果として変化する数字にすぎません。


例えば、登山では地図やコンパスが欠かせません。


しかし、登山の目的は地図を眺めることではなく、目的地にたどり着くことです。


偏差値も同じです。


学習の方向性を確認するための「地図」であって、目的地そのものではありません。


地図を持つことは重要です。


しかし、地図だけを見続けても前には進めません。


実際に歩き続けることが必要です。


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数字の向こう側を見るということ


教育心理学では、学習成果だけでなく、その過程にも注目することの重要性が指摘されています。


同じ偏差値5の上昇でも、


基礎から学び直した結果なのか。


学習習慣が身についた結果なのか。


学習方法を改善した結果なのか。


その背景は、一人ひとり異なります。


数字だけを見ていては、その成長の過程は見えてきません。


一方で、その過程だけを見て、結果をまったく評価しないことも適切ではありません。


教育とは、「結果」と「過程」の両方を見る営みです。


偏差値は結果を示す一つの情報であり、学習の過程を理解することと対立するものではありません。


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数字を使いこなす人が成長する


受験勉強では、模試の結果を見て落ち込むことがあります。


逆に、思うような結果が出て安心することもあります。


しかし、本当に大切なのは、その数字を見たあとに何をするかです。


苦手分野を分析するのか。


学習計画を見直すのか。


勉強方法を改善するのか。


偏差値は、未来を決める数字ではありません。


次の行動を考えるための材料です。


数字に振り回される人と、数字を使いこなす人。


受験生活の中で大きな差を生むのは、この違いなのかもしれません。


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偏差値は、敵でも味方でもありません。


それは、自分の現在地を映し出す鏡です。


鏡は、現実を映します。


しかし、未来を決めることはできません。


未来を変えるのは、鏡に映った自分を見て、次にどのような一歩を踏み出すかです。


次章では、教育心理学の研究をもとに、「人はどのようなときに成長するのか」という問いについて考えていきます。


 
 
 

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