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偏差値は、あなたの価値ではない。―― 数字とともに学び、数字に支配されないために ――

ここまで、本稿では「偏差値とは何か」という一つの問いから出発し、統計学、教育学、認知科学、教育心理学、そして国際的な教育の視点を通して、「学力」と「頭の良さ」について考えてきました。


ここで改めて、最初の問いに戻りたいと思います。


「偏差値は、本当に頭の良さなのでしょうか。」


本稿を通して見えてきた答えは、決して単純ではありません。


偏差値は、人間の価値を表す数字ではありません。


しかし同時に、偏差値は決して意味のない数字でもありません。


この二つは、一見すると矛盾しているように思えます。


しかし、統計学、教育学、教育心理学、そして現代の教育研究が示しているのは、「偏差値を正しく理解し、正しく使うこと」の重要性です。


■■ 偏差値は「現在地」を示す地図である


統計学から見れば、偏差値は受験者集団の中での相対的な位置を示す指標です。


教育学から見れば、人間の知性や学力は、一つの尺度だけで測れるものではありません。


教育心理学から見れば、人の成長は、学習方法や自己効力感、学び続ける姿勢によって大きく変化します。


さらにOECDが提唱するこれからの教育では、知識だけでなく、思考力、協働する力、主体的に学び続ける力が重視されています。


異なる分野の研究は、それぞれ異なる角度から教育を見ています。


しかし、その先にある結論は驚くほど共通しています。


偏差値は、「学力の一部」を客観的に示す優れた指標である。


しかし、人間そのものを評価する指標ではない。


この二つを混同しないことが、教育を正しく理解する第一歩なのです。


■■ 数字は「過去」を示し、行動は「未来」をつくる


模試の結果が返却されるたび、多くの受験生は数字に一喜一憂します。


思うような結果が出れば安心し、期待した数字に届かなければ落ち込むこともあります。


それは決して特別なことではありません。


努力した時間が長いほど、その数字には重みがあります。


しかし、ここで忘れてはならないことがあります。


偏差値が示しているのは、「これまで」の結果です。


「これから」の可能性ではありません。


模試は、未来を決める判決ではなく、現在地を確認するための資料です。


偏差値を見る本当の目的は、自分を評価することではありません。


次に何を学び、どのように改善していくかを考えることです。


数字を見て立ち止まるのではなく、数字を見て前へ進む。


それが、偏差値を正しく活用するということです。


■■ 本当に比較すべき相手は誰か


受験は競争です。


志望校には定員があり、他者との比較は避けられません。


だからこそ、偏差値という客観的な指標が必要になります。


しかし、教育という視点から見れば、それだけでは十分ではありません。


昨日の自分より理解できることが増えたか。


先月より集中して勉強できるようになったか。


以前は解けなかった問題が解けるようになったか。


こうした変化は、偏差値にはすぐには表れないことがあります。


しかし、その積み重ねこそが、やがて大きな成果につながります。


他者との比較は「現在地」を知るため。


自分自身との比較は「成長」を知るため。


教育には、その両方の視点が必要なのです。


■■ 教育の目的とは何か


教育の目的は、偏差値の高い人を育てることではありません。


試験で点数を取ることだけでもありません。


教育とは、自ら学び、自ら考え、自ら判断し、生涯にわたって学び続けられる人を育てることです。


受験は、そのための一つの通過点です。


受験勉強を通して身につくものは、知識だけではありません。


課題を分析する力。


計画を立てる力。


失敗を振り返る力。


困難から逃げずに挑戦する力。


そして、自分自身を客観的に見つめ直す力。


これらは大学でも、社会でも、人生のさまざまな場面で生き続ける力になります。


だからこそ、受験勉強には合格以上の価値があるのです。


■■ 数字を味方にするということ


数字そのものに善悪はありません。


数字は、現実を映し出すための道具です。


偏差値も、その一つです。


数字に支配される人は、数字に振り回されます。


数字を理解する人は、数字を成長の材料にします。


偏差値が伸びた理由を分析する。


伸びなかった理由を考える。


次の学習計画に生かす。


そのように数字を使えるようになったとき、偏差値は評価のための数字ではなく、自分を成長させるための道具へと変わります。


数字は、未来を決めるものではありません。


未来をより良くするためのヒントなのです。


■■ おわりに


「偏差値は、本当に頭の良さなのか。」


この問いから始まった本稿は、一つの結論へたどり着きました。


偏差値は、受験において極めて有用な指標です。


だからこそ、その意味を正しく理解し、適切に活用する価値があります。


一方で、人の知性や可能性、努力や成長を、一つの数字だけで語ることはできません。


数字は、人を理解するための入り口にはなります。


しかし、人そのものではありません。


教育とは、数字を伸ばすことだけを目的とする営みではありません。


数字の向こう側にいる、一人ひとりの可能性を信じ、その可能性を引き出し、未来へとつないでいく営みです。


偏差値は、あなたの価値ではありません。


それは、今いる場所を示す「地図」です。


地図があるからこそ、人は目的地までの道筋を考えることができます。


しかし、地図だけでは目的地にはたどり着けません。


歩き続けるのは、自分自身です。


学び続けるのも、自分自身です。


そして、その歩みの先にある未来は、どの偏差値にも書かれてはいません。


未来をつくるのは、数字ではなく、今日という一日を積み重ねるあなた自身なのです。


 
 
 

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